2026年1月23日、国土交通省から「グリーンインフラ推進戦略2030」(以下、2030戦略)が公表されました。
2015年の第二次国土形成計画で初めてグリーンインフラの概念が導入され、2019年には最初の推進戦略が策定されました。その後、2023年の改訂を経て、今回、2030年を見据えた新たな戦略が取りまとめられたものです。
本稿では、この2030戦略の内容を中心に、これまでの施策の流れを振り返りながら、2030年目標を通過点とする2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、グリーンインフラがどのような役割を果たしていくのかを見ていきたいと思います。
1.自然環境と生活環境をシームレスにつなぐグリーンインフラ
「グリーンインフラとは?」という問いに対して、2030戦略では改めてその定義が整理・明文化されました。

出典)国土交通省HP グリーンインフラ推進戦略2030 参考資料
少し言い換えてみると、グリーンインフラとは、私たちの生活環境と自然環境との関係を見つめ直し、「将来にわたり持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくり及びウェルビーイング向上に貢献するもの」として、自然の多様な機能を活用した社会資本へ転換していこうとする考え方といえるのではないでしょうか。
これまでの人類の発展は、自然環境を開発することで生活環境を広げてきた歴史でもありました。その過程で、自然環境と生活環境はどこか切り分けられた存在として捉えられてきた面もあります。
グリーンインフラは、そうした考え方を修正し、自然環境と生活環境を切り離すのではなく、むしろシームレスにつながるものとして捉え直します。そして、それぞれのよさや役割を重ね合わせながら、よりよい環境をつくっていくという発想に立っているのではないかと思います。
そのため、グリーンインフラの活用分野は幅広く、都市、道路、公園・緑地、森林・里山・農地、さらには河川、港湾に至るまで多岐にわたります。自然のあり方を尊重し、保全しながら、その恩恵を生活環境へと活かす取り組みが数多く挙げられています。
グリーンインフラの活用イメージ

出典)国土交通省HP グリーンインフラ推進戦略2030 参考資料
2.自然共生社会とウェルビーイングの向上
グリーンインフラの施策は、2019年の最初の策定以降、社会情勢の変化を踏まえながら段階的に整理・発展してきました。
2019年の戦略では、気候変動への対応や、当時広がりつつあったSDGs、ESG投資といった世界潮流を背景に、まずはグリーンインフラの特徴や意義を示すことに重点が置かれていました。
その後、2023年の改訂では、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で掲げられたネイチャーポジティブや、2050年カーボンニュートラル宣言といった動きを受けて、グリーンインフラが目指す社会像がより明確にされました。それが「自然と共生する社会」です。
そして今回の2030戦略では、異常気象や災害リスクの高まりといった現実的な課題も踏まえ、防災・減災、暑熱対策といった視点も加えながら、環境・社会・経済の三側面から、その効果が総合的に整理されています。

出典)国土交通省HP グリーンインフラ推進戦略、同2023、同2030
グリーンインフラが目指す「自然共生社会」は、“まち”“ひと”“しごと”のそれぞれにおいて、安全・安心であり、健康的で、豊かさや賑わいを感じられる社会として構想されています。人々の暮らしやなりわいの中に、自然資本を適切に位置づけることで、ウェルビーイングの実現を図っていこうとするものであるといえるでしょう。
こうした考え方が、関連する法制度や社会的枠組みのなかに前提として組み込まれ、社会インフラを整備する際には、グリーンインフラの活用が“特別なもの”ではなく、“当たり前の選択肢”になる社会が期待されています。

出典)国土交通省HP グリーンインフラ推進戦略2030 参考資料
3.2030年に向けたグリーンインフラの社会実装
2030戦略では、これまで進められてきた制度づくりや環境整備と並行して、グリーンインフラの実装を具体的に進めるための個別事業に関するKPI(重要業績評価指標)が設定されました。
2019年以降、グリーンインフラ推進の方向性やの推進場面を示し、目指す社会像を描いてきた流れが、いよいよ具体的な数値目標を伴う社会実装の段階へと進んだと見ることができます。
たとえば都市緑化については、都市域における水と緑の公的空間確保量を、2030年に15.2m2/人(2023年比7%増)とする目標が掲げられています。また、近年の異常気象・災害リスクを踏まえ、暑熱対策や防災・減災の観点から、屋上緑化の拡大や「雨庭」に関する取り組みの増加なども示されています。
グリーンインフラの段階的な充実のイメージ

出典)国土交通省HP グリーンインフラ推進戦略、同2023、同2030からキーワードを抽出して作成
温室効果ガス削減の面では、ブルーカーボンのCO₂吸収・固定量を、2035年に100万t-CO₂(2023年比3倍)とする目標が掲げられています。これは、2025年2月18日に閣議決定された地球温暖化対策計画とも整合したKPIとなっています。
建物・住宅の省エネルギー化などの既存施策と併せて、都市緑化やブルーカーボンなどグリーンインフラを通した温暖化対策も明確に位置づけられました。こうした取り組みが着実に進んでいくことで、カーボンニュートラルの実現はもちろん、その先にあるより広い意味での自然共生社会の姿が、より具体的なものになっていくことが期待されます。
参照(2026.1)
国土交通省 グリーンインフラ推進戦略2030
https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo10_hh_000369.html
同 グリーンインフラ推進戦略2023
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001629422.pdf
同 グリーンインフラ推進戦略https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/content/001613868.pdf


