廃棄物焼却廃熱利用のカーボンニュートラルが制度化

2026年1月21日、環境省から「特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の算定に関する省令の一部を改正する省令」が公布され、同年4月1日から施行されることとなりました。
この省令改正は、「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」に基づき、事業者が事業所管大臣に報告する「温室効果ガス算定排出量」の算定方法を見直すものです。具体的には、廃棄物の焼却に伴って発生する廃熱について、その供給を受けて利用する事業者が、「他人から供給された熱」の使用に伴う排出量を算定する際に、廃棄物焼却廃熱の使用分を計上しなくてよいと定めるものです。
本稿では、この省令改正に係った背景や、今後に期待される影響を概観しながら、カーボンニュートラルの実現に向けた廃熱エネルギー利用の展望を考えたいと思います。

1.廃棄物焼却廃熱の利用に向けたインセンティブ向上

今回の省令改正の背景には、2025年6月に開催された「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会」での議論があります。
この検討会では、現状、廃熱の供給側(廃棄物処理施設)と廃熱の需要側(熱を利用する事業者)の双方で温室効果ガス排出量を算定する仕組みとなっており、結果として排出量が二重に計上されている点が課題として指摘されました。こうした状況を解消するため、廃熱を利用する需要側では排出量を計上せず(排出量ゼロ)、供給側のみで計上するという考え方が整理されました。

出典)環境省HP 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会 第10回資料

これを廃棄物焼却廃熱の生成・利用の流れに当てはめてみると、焼却施設側では廃棄物焼却に伴う排出量を、廃棄物の種類ごとに定められた排出係数を乗じて算定しています。つまり、焼却廃熱の生成に伴う排出量も、すでにこの中に含まれていると理解できます。そのため、焼却廃熱の供給を受けて熱を利用する側が、あらためて排出量を算定する必要はない、という整理がなされたものと考えることができます。
なお、温対法の「特定排出者」は、年間のエネルギー使用量が1,500kL以上(原油換算)であるなどの、一定規模以上の事業者が対象となっています。一方で、現状、特に一般廃棄物焼却施設からの廃熱は、近隣の温浴施設や一次産業施設などの比較的小規模な熱需要に対して、地域貢献の一環として利用されているケースが多いのが実情です。
今回の省令改正により、こうした小規模利用にとどまらず、工場などのより大きな熱需要先に対しても、廃棄物焼却廃熱を供給しやすくなることが期待されており、廃熱利用を後押しするインセンティブ向上につながる可能性があります。

廃棄物焼却廃熱に係るGHG排出量算定の概要

2.廃棄物焼却廃熱の利用によって、年間4千tCO2以上の削減効果に期待

それでは、廃棄物焼却廃熱の利用を進めることで、実際にどの程度のCO2排出量の削減が見込まれるのでしょうか。
研究者の試算では、廃棄物発電の場合は発電効率が比較的低いため、ガス火力発電などの燃料を代替する効果は低いものの、蒸気で廃熱を供給する場合には、ボイラ効率が高いため、化学コンビナートなどのボイラ燃料の代替として高い効果が期待できることが示されています。

出典)日本学術会議HP 公開シンポジウム
「カーボンニュートラルに向けた熱エネルギー分野の展望」における
藤井 実 国立研究開発法人国立環境研究所社会システム領域システムイノベーション研究室室長 発表資料

この試算を、一般的な一般廃棄物焼却施設に当てはめてみると、処理能力が300t/日の施設で、48,000t CO2程度の削減ポテンシャルがあるという単純計算(下表)が成り立ちます。特定排出者に該当する事業者のエネルギー起源CO2排出量は、年間4,000tCO2以上が一つの目安となるため、廃棄物焼却廃熱の利用は、多くの施設を十分にカバーし得る可能性があることがわかります。

特定排出者のCO2排出量と廃棄物焼却廃熱利用によるCO2削減量(試算)

特定排出者のエネルギー使用に伴う CO2排出量廃棄物焼却廃熱利用によるCO2削減量 【廃棄物焼却施設(処理能力300t/日)の場合】
年間4,000tCO2以上 (1500kL/年×2.67tCO2/kL)年間48,000tCO2程度 (300t/日×280日/年×0.57tCO2/t)
〈備考〉 ・1500kL:原油換算のエネルギー使用量 ・2.67tCO2/kL:原油に係るCO2排出係数〈備考〉 ・発電を行わず、廃熱全量を熱供給(A重油代替)に用いた場合の 単純計算。実際には施設内での利用分やロス分が差し引かれる。 ・廃棄物1tあたりの熱供給(A重油代替)に係るCO2削減量 0.57tCO2/t≒(8GJ÷38.9GJ/kL)×2.75tCO2/kL ・38.9GJ/kL:A重油の発熱量 ・2.75tCO2/kL:A重油に係るCO2排出係数

今後、廃棄物の分別や資源化がさらに進むことで、全国各地に低品位の廃棄物が散在する状況が想定されます。そうした廃棄物を地域ごとに焼却・熱回収して、周辺の熱需要に対応していくことは引き続き有効な取り組みです。
一方で、廃棄物焼却廃熱の利用を進めるためには、時間帯や立地条件といった需給のマッチングを計画的に行う必要があり、配管や熱利用設備などの設備投資も求められます。こうした課題を乗り越え、各地に点在する廃棄物廃熱を無駄なく活かしていくためには、廃棄物を集積して、規模のメリットを活かした廃熱利用につなげるという考え方も重要になってきます。
2024年に設立された一般社団法人LCCN推進研究会では、このような大規模な廃熱利用を含む資源循環システムの社会実装に向けた研究が進められています。研究会には、廃棄物の分別や長距離輸送を扱うロジスティクス分科会、集積した廃棄物の焼却廃熱供給を検討する熱利用分科会、廃棄物焼却排ガスからのCCUを扱うCCU分科会が設置されています。関係メーカーなども参画し、10年スパンでの調査研究方針が掲げられており、これまでにない取り組みとして注目されています。

出典)日本学術会議HP 公開シンポジウム
「カーボンニュートラルに向けた熱エネルギー分野の展望」における
藤井 実 国立研究開発法人国立環境研究所社会システム領域システムイノベーション研究室室長 発表資料

廃棄物焼却廃熱利用に関する今回の省令改正は、廃熱利用へのインセンティブを高める大きな一歩といえます。一方で、未利用の廃棄物焼却廃熱を無駄なく活かすためには、さらなる社会的認知の向上と、関係者の継続的な取り組みが欠かせません
カーボンニュートラルの実現に向けて、廃棄物の適正処理と熱エネルギーの効率的利用が両立する社会の実現が、今後ますます期待されます。

参照(2026.1)

環境省 報道発表
https://www.env.go.jp/press/press_02399.html
同 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会https://policies.env.go.jp/earth/ghg-santeikohyo/study.html

日本学術会議 公開シンポジウム「カーボンニュートラルに向けた熱エネルギー分野の展望」https://www.scj.go.jp/ja/event/2025/385-s-1201.html

一般社団法人LCCN研究会
https://lccn.or.jp